（排卵に合わせて）旦那様の精子を洗浄液で洗って、濃縮して、子宮の中に入れます。

　普通のセックスでは精液全部が子宮に吸われるわけでなく、多くは膣から外に漏れます。（膣内に残った精液の中で更に）頚管粘液を泳ぎ抜けた精子だけが子宮の中にたどり着きますが、人工授精ではより多くの元気な精子が子宮の中に入ります。　(残念ながら、出会いの場所　<卵管膨大部>　により多くの精子を送ることはできますが、卵子が卵管に取り込まれているか、そして精子と卵子が出会うのかというとそれはまた別の話なですが。)

人工授精には悪いこともあります。 (→＊1～5をご覧下さい）

　１．お金がかかること　（健康保険がききます。＊1）

　２．いつするか決めなければなりません。*2（健康保険では1周期に1回になります。　人工授精の予約は外来診療の予約とは別枠になっています。　予定はたいがい直前にならないと決まらないのが問題です。）

　３．洗浄濃縮に１時間ぐらいかかります。＊3 (そのため、奥さまの午前、あるいは午後がこれで潰れてしまうことになります)

　４．妊娠率は残念ながらそれほど高くありません。*4

　５．旦那様がうつる病気を持っていると精子を介してうつってしまうかもしれません。*5

　持ってきていただいた精子をそのまま子宮に入れれば　お金も時間もかからないのですが、精液をそのまま子宮に入れるのはよろしくないとされていて、旦那様の精子は子宮の中に入れる前に洗浄します。*3　しかしながらこの洗浄でも精液中の細菌やウィルスなどを＿すべて＿取り去るということはできません。　もし旦那様がこれらをお持ちならば人工授精によって奥様にうつってしまう可能性があります。(ただし通常の性行為でも同様に感染する危険はあります。また病気のなかには現在まだわかっていない/検査できないものもありえることもご了承ください。)*5

　精液を介してうつってしまう病気としては梅毒、肝炎、HIVなどがあるといわれています。あらかじめ旦那様がそのような病気を持っていないかの検査をします。　(症状があるわけではないために健康保険がききません。　1種類の検査について2000円程かかってしまいます。　梅毒、HIVはそれほど頻度のある病気ではありませんし、旦那様がかかっている可能性はきわめて低いと思いますので必須とはしていませんが、　本当は調べなければ「大丈夫」とはいえません。　肝炎は人口の２％ぐらいの人が感染していると考えられていますので、肝炎の検査は最低しておきます。)

妊娠はそれに必要なすべてがうまくそろわないと妊娠しません。　より多くの元気な精子を＿タイミング良く＿送ってやることだけがそのすべてではありません。 (卵管が卵子を拾っているかどうかが重要なのですが、外からでは知る方法がありません)　当院での人工授精による妊娠率は１回あたり５％ぐらいで、５-６回ほどで累積妊娠率は２０％程となり頭打ちになります。*4　(すればするほど効かなくなるということではありません。　効く人には何回かで効いて妊娠するので、　残ってくるのは人工授精が効かない可能性の高い人だというわけです。)

○人工授精がすべての人に必ず＿きく＿わけではないこと。　

○１回だめでもそれだけでは何も言えないということ。　

○かといって１０回も２０回もやるものでもないということをご理解ください。

　次にいつ実際に人工授精するかを決めなければなりません。*2　超音波をみたり注射をしたりして決める場合と尿の検査をして決める場合があります。　尿検査は診察に来なくていいのですが、確実なものではなく、排卵でないときに陽性にでてしまったり、排卵の時によくわからなかったりします。　最低1周期は他の方法(たとえば超音波、たとえば基礎体温)と併用して、信頼できそうか確認します。(残念ながら、超音波も「絶対」の方法ではありません)

　排卵検査薬は午前中の尿でやっていただき、陽性にでたらお電話をください。精子を洗浄する時間が他の方と重ならないように、持ってきていただく時刻をその時に決めています。（もし日曜祝日に陽性にでた場合には、人工授精ご希望の日の前日の朝10時から11時半までに連絡をいただくか、当日旦那様に精液をとってもらって、朝９時過ぎにお電話をください。）（事前に○日の○時というお約束がないと直接精液を持ってきていただいても人工授精ができないことがありますのでご注意ください。）

精液はとってから4時間ぐらいまでなら大丈夫です。

(精液の中にそのままにしておくと精子の運動がだんだん悪くなるのですが、洗浄するとまた動きがよくなります)

　途中、極端な夏の暑さ、冬の寒さにさらすことがありませんようお気をつけください。(特に高温にご注意ください。寒いからと言って、ホットカーペットや車のヒーターで暖めたりしますと運動性が悪くなることがあります)

なお、洗浄に1時間ほどかかります。精液をお渡しいただいたら　席を外していただいて結構です。 一言声をおかけください。

　人工授精は奥の部屋で行ないます。

お名前の確認を何回もするかもしれませんが、間違いがあってはなりませんので、何卒ご容赦ください。

人工授精のあとは少々休んでいただいています。

直後から2～3日少し出血するかも知れません。　（子宮の入口が人によってまっすぐでなかったりしますので、管を入れるのが大変なことがあります。）

　抗生物質が1回分でます。　なるべく早めにおのみください。（人によっては少しふわふわしたり、気持ち悪くなることがあります。あわないようでしたら 次からは他の抗生剤にしますのでお申し付けください）

クリニックにきて精液をとりたい方は前もってお申し付け下さい。（部屋が1つしかありません)

あと、射精後最低30分は(精液の）液化(ドロドロの粘性とか、ゼリーみたいのがなくなること)を待つため、処理が開始できません。　（こちらで精子をとる場合には）人工授精予定の少なくとも2時間前までにはきていただくことになります。