お子さんが欲しい方へ

 

結婚すると子供は自然にできると思っている方、欲しいと思ったらすぐにできるものだと思っている方がいらっしゃいます。

また、周りの方の心無い言葉に深く傷付いている方もいらっしゃいます。

 

子供が出来るためにはいろいろな要素がうまくかみ合わなければなりません。

また、すべてが完璧でも、1回で必ず妊娠するものでもありません。

→排卵の時にタイミング良くセックスしても妊娠する確率は10~20%でしかないということがわかっています。(これが積み重なって、20代のカップルは半年で50%、1年で80%、2年間で90%ぐらいが妊娠すると言われています。←10%のカップルは特になんでもないのに1年では妊娠しないということです)

 

「どこに問題があるのかを調べてほしい」

そう思ってらっしゃると思います。

しかしそれは簡単ではありません。 なぜかというと、

 1 多くの重要なことが体内で起っているので、簡単には調べられない。

 2 人間のことなので、実験ができない。(ので研究がなかなか進まない)

ということだと思います。

 

その前にどのようにして妊娠するかをお話ししましょう。

 

子宮はニワトリの卵ぐらいの大きさで腟の先についています。左右1本ずつの卵管が更にその先についていて、それぞれ卵巣がそのそばについています。月に1回左右の卵巣のどちらからか卵子が排卵され(ることがあり)、これが卵管に拾われ(ることがあり)ます。(排卵したから必ず精子と出会うというわけではないのです。卵子が卵管に拾われるのは数ヶ月に1回ともいわれています)(なお、基礎体温が下がった日は必ずしも排卵日ではないということもわかっています)卵管の入り口付近にはタイミングがよければ、精子が待っているかもしれません。

 

精子と卵子が出会って、うまく受精が起きれば、(精子が卵子の中に入ることを受精と言います。受精が起こるためには卵子のまわりに精子が少なくとも数百は必要だといわれています。)(→精液検査の基準値は1mlあたり2000万以上、運動率は50%以上といわれていますが、実際に出会いの場所まで到達するのは数千しかないといわれています。←最近の研究では子宮と卵管のあいだに関門があって、選ばれた精子しか通過できないのではないかともいわれています。)(卵子は排卵されてから約半日間、精子は射精後2-3日間受精する能力があるといわれています。)

1つの精子が入って受精した卵は「胚」と呼ばれるようになり、5-7日かかって、細胞分裂しながら卵管の中を子宮まで運ばれます。

 

胚は子宮の内膜の中に潜り込んで、栄養を得るための根を生やし、妊娠のホルモンを出し始めます。

これを「着床」と呼び、この着床ができて初めて妊娠が成立したといいます。

この過程のどこか1つがうまく行かなくても妊娠しないのです。

 

しかしながら、このほとんどは奥様の体のなかで起り、外からわかることはわずかでしかありません。

子宮の入り口から先、精子が卵管の先に届いているかもわかりませんし、排卵したかどうかはわかっても、排卵した卵子が(今月は)卵管に取り込まれたのか、精子と出会っているのか、そして受精したのかなどもわからないのです。

(カナダの不妊学会は「排卵」があって、「精子」がいて、「卵管」が通っているかどうか、それだけしか重要ではないとまで言っています。(わかることはそれしか無いということです))

 

。。。ということで、女性側では

1. 排卵しているか(基礎体温をつける、超音波で卵胞を見る、ホルモンの検査をする)

2. 卵管が通っているか(子宮卵管造影というレントゲンの検査をお勧めしています)

3. 妊娠を妨害するようなホルモンがでていないか、とクラミジアの検査(血液検査)

4. 頚管粘液・性交後検査(ヒューナーテスト)

 

男性側では

1. 元気な精子がいるかどうか(精液検査)

 

を検査してみます。

問題が見つかれば、さらに詳しい検査をして必要な治療を決めます。

 

その他に、(最近検査したことがなければ)

5. 風疹(三日ばしか)と

6. 子宮がん検診

をお勧めしています。

(これらは「妊娠するため」に必要な検査ではありませんが、妊娠してからのことを考えてお勧めしています。)

風疹は妊娠初期にかかると赤ちゃんに奇形を起こす怖い病気です。ワクチンで子供の頃を乗り切ってしまった方は、(今はもう)ワクチンの効き目が落ちて来ているかもしれません。免疫が弱くなっていれば、またワクチンをしましょう。

子宮癌はがん検診で早めに見つかれば子宮も取らずにすむ時代になりましたが、通常の診察で気がつくほど進んでいれば、命さえも危険なのは今でもかわりがありません。

 

 

しかし実は、「検査では問題が見つからない」ことのほうが多いのです。

よく他の病院で、「異常がないと言われた」という方がいらっしゃいますが、これは「完璧に正常」というわけではなく、(今できる)検査の範囲内で  「異常が(みつから)なかった」というだけのことです。(これを専門用語で(?)「原因不明不妊」〔または「機能性不妊」〕といいます。)「異常なし」だからといって「タイミング」だけで必ずできるわけではありません。

 

繰り返しになりますが、「精子がいて動いている」からと言って、それで本当にその精子に子供を作る力があるかどうかは実は判りませんし、卵子は見ることもできません。卵管が「物理的に通っている」からと言って、卵子を取り込む力があるかとか、受精や成長を助けたり、子宮まで無事に運んでくることができるかまでは検査できないのです。

 

しかしそれでも、今どのような状態にいるかどうか(現状の把握)は重要なことです。

精子がいないのなら、奥さんをせめても子供はできません。

 

不妊症を克服すること=お子さんを作ること は、ひょっとしたら長い道のりかも知れませんが、適切な検査、治療をすることによって、一日も早い妊娠をめざしましょう